神戸大学大学院海事科学研究科の三島智和 准教授と台湾国立中興大学の賴慶明 准教授の研究グループは、ワイヤレス給電装置の新方式電力制御システムの開発に成功しました。本システムは高精度、高効率かつ、従来システムに対し回路の構成などが簡単化されており、今後、本成果を利用したワイヤレス給電装置の省部品化、低コスト化、軽量化などが期待されます。

本研究成果は、8月6日に国際科学誌「IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Industrial Electronics」でオンライン先行公開されました。

ポイント

  • 電磁誘導・磁界共鳴ワイヤレス給電システムの新電力制御手法を開発
  • 送受電コイルの位置ずれや空隙距離に対応した動作周波数の調整を実現
  • 負荷の変動に対応した高精度な出力調整機能を実現
  • 従来技術に対して、電力変換効率(システム効率)が最大6%向上

研究の背景

電気自動車や電池船などの輸送交通機や、工場の無人搬送車輌などの動力源であるバッテリを非接触で給電するワイヤレス給電システムが、電力利用環境の利便性向上やクリーンエネルギー利用促進の観点から多方面で注目されています。しかしながらワイヤレス給電システムは、電力を発生する送電側電磁コイルと電力を受ける受電側コイルが無接点であるため、その距離(ギャップ長)が大きくなったり、コイルの位置が最適状態からずれると、伝送される電力が大きく低減します。これを防ぐためには、送電コイルに流す高周波電流の周波数や、バッテリの充電量に応じた受電電流の制御が必要であり、電力変換回路や制御装置(コントローラ)の仕組みが複雑化してしまうことが技術的な問題となっていました。

図1.研究の背景・目的

図2.従来技術の問題点と新技術による解決要点

研究の内容

この問題に対し、三島准教授らの研究グループは、コイルの位置ずれやバッテリ受電量を推定し、送電側の回路で高精度に電力を制御できるシステムを開発しました。具体的には、送電コイル電流と電圧の位相差から高周波発生装置(高周波インバータ)の運転状態を高い効率で自動調整する「共振周波数追従」機能と、負荷であるバッテリの電圧等をモニタリングし、基準・指令値と整合するよう制御を行いながら、「デルタ-シグマ変調」と呼ばれる電気信号処理の手法を応用することにより、受電側の複雑な制御を必要とせず、送電側から高精度かつ高効率にワイヤレス給電システムを運転できる新しい電力制御手法です。

図3.開発したワイヤレス給電システムの回路図

図4.従来技術との比較(実測結果)

今後の展開

本研究成果によって、受電側の電力変換回路構成とそのコントローラの構成がより簡単化され、省部品化が可能となることから、コストパフォーマンスに優れた信頼性の高いワイヤレス給電システムの実現が期待できます。これは例えば、電気自動車やドローンなど、車両重量の軽量化が重要となる移動体へのワイヤレス給電において特に有効な技術となります。さらには、ペースメーカーなどの体内埋込型医療機器へのワイヤレス給電方法としても応用が期待できます。

謝辞

この研究は、台湾国立中興大学(部局間交流協定校)の賴慶明准教授との共同研究のもと、海事科学研究科国際交流基金(「国際交流推進事業」2019年〜2021年)課題名「大容量電磁誘導方式ワイヤレス給電システムの要素技術開発」の支援を受けて行われました。

論文情報

タイトル
Load-Adaptive Resonant Frequency-Tuned Delta-Sigma Pulse Density Modulation for Class-D ZVS High-Frequency Inverter-based Inductive Wireless Power Transfer
DOI:10.1109/JESTIE.2021.3102445
著者
Tomokazu Mishima (Kobe University), and Ching-Ming Lai
掲載誌
IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Industrial Electronics

関連リンク