111の活火山※1が点在する火山大国日本にあって、フィリピン海プレートが沈み込む西日本では、九州には10以上の活火山が密集するにもかかわらず、中国・近畿地方には活火山は2つしかありません。また近畿地方には活火山は存在しない一方で、有馬には高温の温泉が湧出します。神戸大学海洋底探査センター、大学院理学研究科、都市安全研究センターでは、防災科学技術研究所と共同でこれらの謎を統一的に解くために、過去のプレート運動の再現とプレートの沈み込みに伴う熱現象について解析を行いました。

 その結果、九州の地下には古くて冷たいプレートが、中国・近畿地方では若くて熱いプレートが沈み込み、近畿地方では有馬の直下でプレートから高温流体が放出されて温泉となっていること、またその結果プレート内部の水が減少して火山活動を起こすことができないことが分かりました。一方九州では、プレート内の水が全てマグマを発生させる※2ために使われており、多量のマグマが作られるため火山が密集していると考えられます。

 この成果は、9月14日付けで、英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

図1 日本列島周辺のプレートの配置と活火山(三角)の分布

太平洋プレートの沈み込みによって東日本火山帯が、フィリピン海プレートによって西日本火山帯が形成されている。

研究の概要

 フィリピン海プレートが南海トラフ・琉球海溝から沈み込むことで、西日本では火山活動が起きています。しかし、九州には10以上の活火山が密集するにもかかわらず、中国・近畿地方では中国地方に2つ、近畿地方には活火山は存在せず、火山の分布は極めて対照的です。また、近畿地方には活火山がないにもかかわらず、高温の有馬温泉が湧出しています。

 過去1400万年間のフィリピン海プレートの運動をマグマ活動の推移などをもとに再現すると、現在の九州の下には5000万年以上前にできた古くて冷たいプレートが、中国・近畿地方には2500〜1500万年前に誕生した若くて熱いプレートが沈み込んでいることが分かりました。

 これらの結果を用いて、沈み込むプレート周辺の温度構造と含水量をシミュレートし、プレートから水(高温流体)が絞り出される場所とマグマの発生の関係を調べました。

 その結果、近畿地方では有馬の直下でプレートから高温流体が放出されて温泉となり、そのためにプレート内部の水が減少して火山活動を起こすことができないことが分かりました。一方九州では、プレート内の水が全てマグマを発生させるために使われているため、火山が密集していると考えられます。

図2 西日本火山帯の活火山(赤三角)と沈み込むフィリピン海プレートの上面までの等深線(単位km)

黄丸は有馬型塩水泉を示す。A, Bは図3で示す断面側線。 ピンクの三角は、太平洋プレートの沈み込みで造られる東日本火山帯。

図3 形成年代が異なるフィリピン海プレートの境界をなす九州パラオ海嶺の位置の過去1400万年間の変化

フィリピン海プレートの300万年前の大方向転換を考慮した九州パラオ海嶺(KPR)の移動

  • 1400万年前、誕生直後の熱いプレートの沈み込みによって、プレートが融けて「異常マグマ活動」が勃発
  • その西端は屋久島の花崗岩
  • 1400万年前のKPR (熱いプレートと冷たいプレートの境界)の位置がわかる
  • その後300万年前までフィリピン海プレートは北向きに沈み込む
  • 300万年前に大方向転換して現在の位置までKPRは移動
  • 現在のプレート運動に基づいて、300万年前のKPRの位置が求まる
  • 九州全体の下には冷たいプレートが沈み込んでいる
  • 一方で中国地方の下には、熱いプレートが沈み込む

研究の背景

 日本列島のように海洋プレートが沈み込む地域(沈み込み帯)では、活発な火山活動が認められます。これは、プレートに含まれる水が、沈み込みに伴う温度・圧力の上昇によって絞り出され、周囲の岩石を融かしてマグマを発生させているからだと考えられています。しかし、沈み込み帯の火山の数(分布密度、間隔)が場所によって大きく変化する理由は明らかではありませんでした。例えば、同じフィリピン海プレートが沈み込む西日本でも、九州には火山が密集するのに対して、中国地方には活火山が2つしか存在せず、近畿地方には存在しません。また近畿地方には、非火山性にもかかわらず高温の有馬温泉が湧出し、この温泉と活火山が存在しないこととの関連は不明でした。

 今回の研究は、上述の謎について定量的かつ統一的な説明を与えるものです。

図4 沈み込むプレートの温度構造と含水量のシミュレーション結果

今後の展開

 中国・近畿地方には活火山こそ少ないものの、過去200~300万年間に活動した小型の火山(例えば神鍋山など)が点在し、このような火山の成因を明らかにすることは火山防災上重要です。また、九州には破局的噴火を起こした「超巨大火山」が密集していますがその成因は明らかになっていません。今回の研究成果に基づいて、これらの課題に取り組んで行きたいと考えています。

図5 九州と中国・近畿で火山数が異なり、近畿地方に有馬型高温泉が湧出するメカニズム

解説

※1 活火山
過去1万年程度の間に火山活動を起こした火山。ただし、火山の寿命は100万年以上と考えられるため、活火山以外も噴火する可能性があることに注意。
※2 水が加わるとマグマが発生する
水が加わると、岩石を構成する分子の隙間に入り込み結合を切る。このことで分子が自由に動く状態、すなわち液体となる。ただし水は、地球内部では液体ではなく、「H2Oを主成分とする流体」として振る舞う。

論文情報

タイトル
Contrasting volcano spacing along SW Japan arc caused by difference in age of subducting lithosphere
DOI:10.1038/s41598-020-72173-6
著者
巽好幸1、末永伸明2、吉岡祥一2,3、金子克哉3、松本拓己4
1 神戸大学海洋底探査センター
2 神戸大学都市安全研究センター
3 神戸大学大学院理学研究科
4 防災科学技術研究所
掲載誌
Scientific Reports (Nature Publishing Group)

関連リンク