この度、神戸大学医学部附属病院の山本和宏副薬剤部長・講師と桃谷順天館グループ(本社:大阪市中央区、代表取締役社長桃谷誠一郎)は、分子標的型抗がん薬の影響で起こる皮膚障害(手足皮膚反応)に対して、ビタミンC誘導体(ビスグリセリルアスコルビン酸)を含む製剤が、手足皮膚反応を予防する可能性があることを新たに見出しました。
本共同研究成果は国際専門誌「The Oncologist」に掲載されました。
研究の背景
がん薬物療法は、がん細胞の特定の標的分子に作用する分子標的型抗がん薬の登場により治療成績が飛躍的に進歩しました。しかし、当初副作用が少ないと考えられていた分子標的型抗がん薬においても皮膚障害等の副作用が認められ、患者の生活の質(QOL)を低下させる要因となっています。
現在、分子標的型抗がん薬に起因する皮膚障害の発症メカニズムに基づいた予防・治療法は考案されておらず、既存の経験則に基づいた予防法の効果は決して高いとはいえない状況です。
本共同研究では、分子標的型抗がん薬(マルチキナーゼ阻害薬)による皮膚障害(手足皮膚反応)の発症メカニズムに係る基礎研究を進め、ビタミンC誘導体がマルチキナーゼ阻害薬の表皮角化細胞に対する毒性に抑制的に作用することを報告してきました。
研究の内容
マルチキナーゼ阻害薬であるスニチニブを内服する腎細胞がん患者を対象としたビタミンC誘導体配合製剤の安全性および皮膚障害の予防効果を検証する第Ⅰ/Ⅱ相試験(単施設・非盲検・非対照)を特定臨床研究として実施し、腎細胞がん患者に対する本製剤の安全性と皮膚障害に対する予防効果を示唆する結果が得られました。
今後の展開
第Ⅰ/Ⅱ相試験結果を踏まえ、今後、検証的な臨床試験を進めるとともに、ビタミンC誘導体配合製剤のより詳細な有効性のメカニズムの解明を目指していきたいと考えています。
論文情報
- タイトル
- “Safety and Efficacy of Bis-Glyceryl Ascorbate as Prophylaxis for Hand-Foot Skin Reaction: A Single-Arm, Open-Label Phase I/II Study (DGA Study)”
- DOI
- 10.1093/oncolo/oyab067
- 著者
- Kazuhiro Yamamoto, Satoshi Nishiyama, Makoto Kunisada, Masashi Iida, Takahiro Ito, Takeshi Ioroi, Hiroo Makimoto, Tomohiro Omura, Kenichi Harada, Masato Fujisawa, Chikako Nishigori, Ikuko Yano
- 掲載誌
- The Oncologist. 2022 27(5):e384-e392