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English医工連携の力により切り拓く新たな自閉症治療学の創出
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする神経発達障害における中枢感覚情報処理の異常に焦点を当て、その神経基盤の解明と新規治療法の開発を目指す学際的プロジェクトです。ASDは社会性の障害に加えて感覚過敏や鈍麻を示し、発達過程における感覚入力の処理異常が病態形成に関わると考えられています。本研究ユニットでは、この感覚処理メカニズムを基礎から明らかにし、人工的な感覚変調を利用した治療的介入の可能性を探ります。
研究代表者の橘(医)は、自閉症モデルマウスを用いて、外受容・内受容感覚の統合を担う島皮質を中心とした神経活動を多細胞記録法により解析し、ASD発症機構の理解を進めます。神野(工)は圧電デバイスを開発し、末梢感覚系や中枢神経系を人工的に操作する技術の構築を試みるほか、超音波による非侵襲的な神経調節法にも取り組みます。藍原(農)は腸内細菌叢とASDの関連に着目し、食餌操作による腸内環境の変化が免疫系・神経系に与える影響を検証し、自閉症様行動の改善を試みます。近年、腸内環境から迷走神経を介して島皮質に影響が及ぶ経路が示唆されており、多角的アプローチとして重要な位置づけとなっています。北田(国際)は、触覚特性の心理物理学的研究の経験を生かし、得られた基礎知見を実際のASD患者を対象に検証します。
本研究は、医学・工学・農学・心理学が連携してASDに多層的にアプローチする先進的な取り組みであり、病態理解の深化と新規治療技術の創出につながることが期待されます。




